この作品は2011/03/11東日本大震災チャリティ電子書籍企画『プロジェクトうりゃま 〜ラブ&ハッピー〜 夏』に掲載されていた作品の再掲載となります。

このコンテンツはR18相当の描写を含みます。18歳未満の方、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。



 ふうっと大きく息をつく。
 次の瞬間、背中から腰へと大きな手が優しく滑り降りていくのを感じ、その手の動きからもたらされる甘い痺れに結花は陶然とした。
 それからふと思う。
(あれ? ここ、どこでしょう?)
 薄っすらと目を開けてみると、淡い照明の中にいるらしい。
(それに私、誰かに抱かれているような気がします)
 ほどよく筋肉がついた誰かの肩に顎をのせてうっとりとしている自分に気がつく。足元はふわふわとしているが、誰かがしっかりと支えてくれているようだ。
(もしかして……ヒデさん!?)
 先刻バーで左隣にいた端整な顔立ちの男性が脳裏によみがえる。
(この髪の感じとか、きっとそう……)
 しかし酔っているせいか脳の働きが鈍く、ただ男性に身を預けているだけでも結花は幸せな気分だった。
 背中と腰を二往復した大きく温かな手は、期待通りその下の丸みを愛しげに撫で始めた。
「ふっ……」
 思わず息遣いが荒くなる。気持ちがいい。
 結花の中の普段は眠っている自分が徐々に目を覚まし、その手の動きをもっと堪能しようとする。
「結花? 起きてる?」
 ほんの少し首を縦に動かすと、秀人がフッと笑った。
「俺が誰だか覚えてる?」
「ヒデさん」
「こういうときは秀人って呼んで」
 彼の低い声はどうしてこんなに魅惑的なのだろうとぼんやり思う。
「秀人……?」
「続けて『愛してる』って言ってよ」
「えっ?」
 ゆっくりと首を傾げた。
 すると急に秀人の肩が下がり、顎が宙に浮く。
「ひゃっ……!」
 膝丈まであるスカートの裾から彼の指が忍び込んできた。ストッキングを滑る指の感触は繊細で、顎の支えを失った結花は秀人の首に抱きつき、その怖いくらいの刺激に酔う。
「結花のかわいい声で聞きたいな」
 耳のそばで秀人の声がしたかと思うと、彼の指が結花の足の付け根に達し、核心には触れないように悪戯し始めた。
「……んっ……、はぁ……ん」
「言えない?」
「だって……、んふっ……」
(「愛してる」なんて簡単に言えな……い)
 考えが上手くまとまらないが、それだけはどうしても言えない気がする。好きか嫌いかと訊かれたら、嫌いではないのだが。
「結花は強情だな」
 ため息混じりに秀人が言う。それから笑って付け足した。
「身体は素直なのに」
 それはアルコールのせいだ、と反論したかったが、ベッドの上に倒れこんでスカートとストッキングを剥ぎ取られてしまい、そんな余裕はなくなった。
 ついでに上に着ていたシャツも脱がされる。
 素肌があらわになり、寒さと恥ずかしさで身体を緊張させていると、服を脱ぎ捨てた秀人が結花に覆い被さってきた。
「キスしてもいい?」
 こくっと頭を縦に動かす。
 フッと笑った秀人はそのままゆっくりと唇を寄せた。最初は軽く触れるくらいのところで止まる。
 結花が薄く目を開けると、真上の秀人が意地悪な目つきをした。
「んっ……!」
 胸の膨らみを円を描くように、彼の手が動く。時折指が蕾のような突起に触れ、そのたびに結花は身を捩った。
 重ねているだけのキスがもどかしくなり、結花は自分から秀人の唇をむさぼる。キスが激しくなると、彼の指も同じように結花の身体を激しく愛撫した。
「あっ……あぁん……」
 秘部は既に濡れていて、卑猥な音が静かな室内に響いた。
 アルコールで火照った身体は更に熱くなり、触れられるところ全てが異常なほど感じる。しかも素面(しらふ)のときよりも気持ちよさが持続し、どこまでも上昇していけそうな気がした。
 秘裂を行きつ戻りつしていた秀人の指が何かを見つけ出し、その部分だけを執拗に擦り始める。
「あぁ……あんっ……あっ、あぁっ!」
 突然結花の中に彼の指が挿し込まれた。もう十分に潤っていたので奥まですんなりと受け入れてしまう。
 指の関節や指先が結花の内部を擦り上げる。最初はゆっくりと、次第に速く――。
 呼吸をするのも困難なほどに煽られながら、結花は飛翔する自分を思い描いていた。どこまでもどこまでも遠くへ飛んでいけそうだ。
 もっと、もっと、遠くへ――。
 ひたすらそう願っていたのに、秀人は急に上体を起こした。
「俺も気持ちよくなりたいな」
 掠れた声で懇願するように言う秀人が子どもっぽく見えて愛しく思う。言われるまま、結花は秀人の硬くなったものを手で握った。
(熱くて硬くて……大きい!)
 慣れない手つきで彼自身を小刻みに動かす。やっとの思いで片手で握っているのだが、隣に横たわる秀人の息遣いが荒くなり始め、結花も安心すると同時にもっと彼に感じてほしいと思った。
 彼の大きなものを握ったまま、結花はずるずると彼の足元へ移動した。
「結花?」
「あまり上手じゃないけど……」
 そう前置きしてから、思い切って彼の先端を口に含んだ。微かに秀人の味がする。それをごくんと飲み込むと、手の動きとあわせて口をすぼめた。
「んっ……」
 彼がのけぞった。感じている姿を見ると自分の奥のほうも疼いてくる。
 それでも余裕なのか、秀人は結花の頭を優しく撫でていた。
 もっと感じてほしいと思い、しばらく行為に没頭する。
「結花、こっちにおいで」
 ふと、秀人が首だけを起こして言った。
 彼のものを口にしたまま目で問うと、秀人は起き上がり結花の足をつかんで枕元へ引き寄せる。あっ、と思った瞬間、結花の秘所に彼が顔を埋めた。
「やぁっ!」
「結花も続けて」
 そうだった、と思い出して再び彼のものを口に含んだ。すると彼の舌の動きも繊細なものに変わり、快楽の波が結花を激しく弄ぶ。
「んふっ……んっ、んっ」
 口の中の秀人がこれ以上ないくらい硬く張りつめた。
「気持ちよすぎて、もう限界」
 言うなり彼は結花の上に覆い被さってきた。結花は手際よく準備する秀人を目で追い、その瞬間を待つ。
「ねぇ、『愛してる』って言って」
 秀人は自身をあてがって意地悪な目をした。焦らすようにそのまま結花の反応を見ている。
「でも……」
「言えない?」
 黙って秀人を見つめ返す。
 結局、先に秀人が降参というようにフッと笑った。
「困った子だね。愛してもいない男とこんなことするなんて」
「はぁっ……んっ!」
 硬く熱いものがじわじわと結花の中に侵入してきた。力を抜いたほうが楽になるのはわかっていても、あまりの存在感に全身が緊張する。
「痛い?」
 結花は首を横に振った。
 意外にも痛みより胸のざわめきが上回る。彼が少しずつ奥へと入ってくる感覚は、これまでの中で1番心躍るものだった。
(あんな大きなものが私の中に……)
「全部入った」
 見上げると思いつめたように真剣な顔をした秀人がいた。
 思わずその綺麗な顔に見入ってしまう。
「イケナイ子だ」
 そう言って不敵な笑みを浮かべたかと思うと、彼は激しく動き始めた。
 結花は慌てて秀人の首に抱きついた。
「んっ! はぁっ、あぁ、んんっ……」
 最初はついていくのがやっとだったが、次第に大きなうねりの中から心地よいリズムが生じ、その奥から切なく愛おしく泣きたくなるような刺激が結花の全てを飲み込んでいった。
「……んっ……ああ、あぁん、あぁっ……、んっ、もう……」
「いっちゃいそう?」
 その問いに結花は激しい息遣いで答える。
 真上の秀人は嬉しそうに笑った。
「じゃあ遠慮しない」
 そこからは本当に全力で彼が迫ってきた。
 結花の中は擦られるたびに熱を帯び、もっとずっと彼を感じていたいと思う。だが、その切なる願いは叶えられるはずもない。
「……ああっ、やぁっ、あああ!」
「……っく!」
 脳のどこかが焼き切れたような痺れが結花を包む。
 脱力した秀人は結花の上に倒れこんできた。
「結花、愛してるよ」
「…………?」
 空耳かと思うような掠れた小声だった。
(えっ? 今なんて……)
 訊き直そうとしたが、意志に反して結花のまぶたは閉じてゆく。
(まだ、眠っちゃだ……め)
 このまま眠ったら大変なことになると思いながらも、目を瞑ると最高にいい気分だった。少し気だるい身体を横たえたまま、秀人との行為の余韻に浸る。
 そのうち彼のぬくもりに安心して、今度は夢の世界へと飛翔していった。